’24/09/15_「あのこは貴族」山内マリコ

しまった。早速昨日の分が空いてしまった。

今日は別の本の内容をまとめていたが、それとは別で読んで
面白いなと思った小説を紹介させていただこう。

皆さんは東京に行ったことはありますか?
就活やライブやイベントなどで行ったことがある人は多いと思う。
ではこの小説でいうところの「東京」の人はどれほどいるだろうか?
幼少期から大学まで有名私立に通い、一流ホテルのラウンジやカフェで
お金を気にすることなく優雅にティータイムを過ごしたり、
軽井沢に別荘を持って毎年恒例の避暑地として過ごす。
かといって嫌みがあるかというとそういうわけではなく、
「東京」以外の人と接しても何も思わず対応する。

「東京」以外の人が大学などでその集団に所属して、
何気ない所作やライフスタイルの違いから、
勝手にコンプレックスを拗らせたり、背伸びして近づいたりして
歪みに悩んだりする。

ただ「東京」の人たちは彼らなりのステイタスや
習慣を大事にしていて、息苦しさもある中で将来設計に苦労する。

この小説では「東京」の女性と、地方出身の「東京」以外の女性が
偶然1人の「東京」の男をきっかけに巡り合い、
それぞれの視点から見た東京を軸に話が進み、読者が考え方の違いの
温度差に風邪をひきそうになる、そんなお話だ。

THE 庶民(下の方の出)なので、どうしても感情が地方出身者に
引っ張られてしまう。
大学時代は同期に大企業の部長職を務めるやつがいたりした。
そいつはバイトもしたりしていたが、少なくとも下宿して
仕送りももらっていたりと羨ましく思う部分もあった。
俺は体育会系の部活に所属していたこともあったが、
帰りが遅くなって、次の日の1限に間に合うように朝早くの
電車に乗ってと結構ハードだった。

学費を出してもらってた(奨学金だよね?)こともあり、
下宿したいなどとは言えず、優雅にキャンパスライフを送る
下宿生を眺めることしかできなかった。
ただそいつらも基本的にはいいやつなのも悔しかった。
きっと彼らなりの苦労もあったはずだが、当時の俺には
見えていなかった。

自語りが多くなってしまったが、地方出身者には分からない
「東京」の人たちで共有されるコンテクストや空気感。
それが嫌みなく当たり前のような文体で読みやすく書かれており、
それぞれの立場からそういう世界もあるんだね、
と思わせてくれる1冊です。

秋の夜長に是非ご一読いただきたい。

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